悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 *


「……あ」
「頼久さん……」


 帰宅してマンションに入ろうとした時、ちょうどつかさも帰宅したところだった。
 恐らく要の面会に行っていたのだろう。


「おかえり」
「頼久さんこそおかえりなさい」


 昨日のことがあってなんだかギクシャクした空気が流れたまま、二人は揃って中に入る。


「今日は僕が夕飯を作る」
「えっ、私がやるよ」
「家事は折半してやるというルールだっただろう」
「あ、ありがとう」


 それでもつかさは落ち着かないのか、なんだかソワソワしながらキッチンを見ている。


「……そんなに見られるとやりにくい」
「あっ、ごめんなさい。頼久さんって料理できたんだと思って」
「一人暮らしが長いからな」
「そっか」


 頼久が作ったのは白米、味噌汁、焼き魚、煮物といった和食メニューだった。


「わ、美味しそう」
「簡単なものしか作っていないからな」
「ううん、ありがとう。いただきます」


 最初に味噌汁をすするつかさは、一口飲んでほわんと癒された表情になった。


「美味しい」


 ふにゃっとしたつかさの笑顔があまりにもかわいくて、表情筋が硬くて良かったと思った。


「お味噌汁ってなんだかホッとするよね」
「そうだな」


 その後もつかさは頼久の手料理を美味しそうに食べてくれた。
 昔から表情筋が岩のような頼久とは違い、つかさはなんでも表情に出やすい。

 特に美味しいものを食べている時の幸せそうな顔はかわいらしい。
 そういうところも好きだと思う。

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