悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 要が殺人罪で逮捕された。
 それが事実だとしても、受け止めることはできなかった。


「どうして、どうしてなの要……っ」
「違うよ、お母さん!」


 父に肩を抱きしめられながら泣きじゃくる母に、つかさははっきりと言い切る。


「要は誰かを殺したりなんかしない」


 そんなことするような子じゃないことは、つかさがよくわかっている。
 あんなに社長秘書になれたことを喜んでいたのだ。
 これはきっと、何かの間違いだ。


「そうだ。つかさの言う通りだ」


 徐に祖父が頷いた。


「要はそんなことしない。家族が信じてやらなかったらどうする」
「そ、そうだよな。母さん、大丈夫だよ」
「そうよね……要はそんなことしないわよね……」


 突然そんなニュースが飛び込んできたら気が動転してしまうのも無理はない。
 その日は早めに作業を切り上げることにした。

 整体院から帰ってきた芯は、青ざめていた。


「姉ちゃん、兄ちゃんが……」
「大丈夫よ、芯ちゃん。要が殺人なんてあり得ない、何かの間違いなんだから」
「そ、そうだよね」


 祖母はずっと仏壇の前で手を合わせ、ブツブツ呟きながら祈り続けていた。


「ご先祖様、どうか要をお救いください……」


 いつもは美味しい祖母の夕食は全く味がしなかった。


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