悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
翌日、両親とつかさは東京拘置所へ向かった。
気を病んで体調を崩してしまった祖母と腰の悪い祖父のため、芯は実家に残ることにした。
面会室で緊張しながら待っていると、刑務官に連れられて要がやってきた。
髪はボサボサ、髭は伸ばしっぱなしで目の下には隈があり、酷くやつれて見えた。
「要ぇっ!!」
母は一ヶ月前とは変わり果てた息子の姿を見て、涙が止まらなかった。
そんな様子を見て、要の目にも大粒の涙が溢れる。
「かあちゃ……っ、おれ……っ」
「要、何があったんだ。父さんたちに話してくれないか?」
父は母の肩を抱きながら、真っ直ぐな瞳で要を見つめる。
要は涙を拭いながら、ポツリポツリと話し始めた。
「俺、社長秘書になってまだ日が浅いから、仕事を覚えるのに必死で……秘書室で遅くまで残業してたんだ」
事件当夜、要は一人で残業していた。
明日のスケジュール、準備が完了したと確認したところで、そろそろ上がろうと思った。
念のために社長室に寄ってみたら、部屋の明かりがドアの隙間から漏れ出ていた。
「社長も遅くまで仕事してたんだと思って、一言挨拶して帰ろうと思ったら、社長が血まみれになって倒れていたんだ……」
社長の腹部には果物ナイフが突き刺さり、そこから痛みましい程の鮮血が滲み出し、社長が海外から取り寄せたという自慢のカーペットが真っ赤に染まっていた。
震えながら社長に触れた要は、自分の手にこびり付いた血を見て真っ青になった。