悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 つかさは頼久を見てニッコリと微笑む。


「本当は頼くんって呼びたかったんだ」
「……好きにしろ」
「嬉しいくせにー」


 頼久は答えなかったが、たったこれだけのことが嬉しくてたまらない。

 それにしても惺久が好きなわけではないとは思わなかった。
 長年勘違いしていた自分がマヌケだと思いつつ、心に刺さっていた棘が抜け落ちたような気分だった。


「それからね、頼くん。もう一つ話したいことがあるの」


 今度はなんだかかしこまったように姿勢を正す。


「頼くんには関係ないなんて言って、傷つけてごめんね」
「え……? ああ、あの時のことか」


 頼久がつかさにフラれたと認識した時のことを言っているのだろうと思った。


「あの時つい突き放して頼くんを傷つけたこと、ずっと後悔してた。本当にごめんなさい」
「いやいい、僕も悪かった」
「ううん、頼くんは悪くないよ」


 あの日何故泣いていたのか、理由を聞きたかったが口をつぐむ。
 今更十二年前のことを掘り返すのは野暮だろう。

 当時つかさは多感な年頃で色々と悩みがあったのだと思う。
 だが涙の理由が別の男を思ってのものだとしたら、胸あたりがジリジリとひりつく感覚を覚えた。


(やっぱりつかさが好きだ)


 顔も見えない相手に嫉妬してしまう程つかさを愛している。
 何度諦めようとしても真っ直ぐ向き合ってくれる彼女に惹かれずにはいられない。


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