悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
学生の頃、頼久は帰り道に他校の女子に写真を撮られたことがある。
「撮ってもいいですか」などと聞かれたわけではなく、完璧な隠し撮りだった。
「あの時のつかさの勢い、すごかったな」
「え? 何が?」
「覚えてないか? 隠し撮りした女子たちに対して消してくださいって殴り込みに行ったの」
「殴り込み!? そんなことしてないと思うけど」
「それは冗談だが、勝手に撮られたら不快だからって真摯に怒ってくれていたぞ」
「そうだっけ……」
言われてみれば言ったような気もする。
不快感を滲ませた頼久が目に浮かぶようだ。
きっと当時のつかさはそんな彼を見ていられなかったのだろう。
「昔からつかさは間違っていることをはっきり間違っていると言える性格だよな」
「感情のままに突っ走るところ変わってないよね」
「そこが君の長所だろう」
真っ直ぐに褒められるとは思わず、驚いて頼久を見返す。
「思った時にすぐに行動できるのはすごいことだ」
「あ、ありがとう……」
つかさは照れ臭くなってオムライスのデミグラスソースをかき混ぜる。
頼久の言葉に嘘がないとわかるからこそ、直球すぎる褒め言葉がむず痒い。
嬉しいけれど照れてしまう。
(なんだか頼くん、最初に会った頃と雰囲気変わったよね。いや戻った?)
最初は誰も寄せ付けない氷点下のオーラを感じたが、表情こそ崩さないものの少し柔らかくなった気がする。