悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 一口パンケーキを口に運べば、ふわふわとした食感が口の中を踊る。パンケーキの甘さとフルーツの甘酸っぱさが絶妙なハーモニーを奏で、思わず頬がとろけていた。


「美味しい〜!」
「写真撮ってもいいか」


 急に頼久はスマホを取り出す。


「え、撮ればいいんじゃない?」
「パンケーキじゃなくつかさを」
「私を!?」
「撮りたくなった」


 真顔でつかさに向けてカメラを向ける。


「なんで私なの?」
「撮りたくなったんだ」
「い、いいけど……」


 つかさは少し戸惑いながらカメラに向かってピースする。
 すると頼久は眉をひそめる。


「違う」
「違う?」
「その顔じゃない、さっきのだ」
「さっきのって何よ!」


 なんだかよくわからなかったが、二人であーだこーだ言いながらパンケーキに舌鼓を打っていた。
 いい大人がはしゃいで恥ずかしいと思いつつ、童心に返れたみたいで楽しい。

 頼久とこんなに楽しくパンケーキを食べることになるとは思っていなかった。
 彼と一緒にいる時だけ感じる、安心感と居心地の良さとほのかなときめきを覚えた。

 昔みたいな関係になれるのは嬉しいはずなのに、それだけでは物足りないと感じてしまう。


(それは今の私たちが夫婦だからなのかな……)


 この結婚は取引だ。夫婦といっても書類上だけ。
 それ以上望んではいけないのに、欲張りになる自分からは目を背けた。


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