悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
シャドウというのは敵側から送り込まれたスパイのキャラクターだ。
最初は地味でおとなしい少年だったが、実はなかなかに性格の悪いキャラクターだった。
「彼はいいな」
「え、そう? シャドウって相棒の妖精に当たり強くない? ネットだとモラハラだって言われているけど」
「モラハラとは随分だな。シャドウはただ自分の好きなものを素直に好きだと言えないだけだ」
「そうなのかなぁ?」
つかさは今ひとつピンとこなかった。
昔から頼久とつかさの好きなものは違う。同じ映画を観ても感想は食い違う。
だがそれが意外に面白い。
自分とは異なる視点から切り込むため、目から鱗で感心する。
今も悪役のシャドウにそんな風な見方があるとは思わなかった。
「頼くんって他人と目の付け所が違うから面白いよね」
「そう言ってくれるのは君だけだ」
「え、そう?」
「前に別の映画の感想を話した時、なんでそんな風に思うのかと変な顔をされた」
「ふうん……」
「人の心がない、とも言われたな」
「そうなんだ……」
(それ、誰に言われたの?)
その言葉は喉元で押し込めた。
もしかして昔付き合っていた恋人だろうか。
つかさを牽制してきたあの内海まりえだろうか。
(過去は詮索しないって決めたのに気になっちゃう)
前の恋人とも今みたいにデートしていたのかと考えると、胸の奥がモヤモヤする。
「――危ない!」