悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。


 * * *


 それから数日経ったが、頼久はいつも通りだった。
 あの時あったことなんてなかったかのように。

 つかさは気になって仕方なかったが、普段通りの頼久に蒸し返すのは違う気がする。
 もう気にするのはやめようと思っていた時。


「はあ……」


 頼久の溜息が多くなった。明らかに顔色が良くないし、疲れている気がする。


(いやこれは、もしかして落ち込んでいる……?)


 何か根拠があるわけではないし、なんとなくだが落ち込んでいるように感じる。
 頼久は常に真顔で淡々としている。だけど時折溜息をつき、メガネの奥の瞳は憂いを帯びている。

 もしかして仕事が上手くいっていないのかもしれない。
 あの完璧主義な頼久に限ってあり得ない気もするが、人間誰しも失敗することはある。


「そういう時こそ甘いものだよね」


 つかさは母直伝の梨ゼリーを作り、仕事に行こうとする頼久にゼリーを渡した。


「はいこれ、おやつに食べて」
「おやつ?」
「梨ゼリーだよ」
「! ありがとう、いただく」


 一瞬頼久の目が輝いたのを見逃さなかった。
 好物に対してのみわかりやすくなるところは、昔からかわいいなぁと思う。


(私にできることはこれくらいだけど、少しでも元気になってもらえたらいいな)


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