悪辣検事は初恋妻をこの手に捕らえて逃がさない。
第七章 忘れたくないあの日
十月十七日、頼久は「相田家代々之墓」と掘られた墓石の前で佇んでいる。
この日は友人・相田克也の命日であり、毎年欠かさず花を手向けて線香を上げていた。
今日で相田が亡くなり、十年が経つ。
数分手を合わせた後、静かにその場を立ち去る。
帰り際に一本電話をかけた。
「もしもし、僕だ」
《ボクボク詐欺っすか?》
「藤川、ふざけるな。永瀬だ」
《冗談ですよ》
「今から戻る。メール送った件、調べておいてくれるか」
《了解です。俺も詳細は戻られてから説明しますが、内海まりえの資料送っとくんで見といてください》
「わかった」
通話を切り、車を走らせる。
車の運転は嫌いじゃない。運転に集中していると余計な雑念が消え、特に煮詰まっている時は頭の中がクリアになる。
気分転換に意味もなくただドライブする程。
だけど今日は、どうしても相田のことを考えてしまう。
相田とは高校からの付き合いだった。
話すようになったきっかけはあまり覚えていない。
相田は社交的で人と話すのが好きだった。
寡黙で社交的ではない頼久に対しても、持ち前のコミュ力と良い意味での図太さでグイグイきた。
『頼む、永瀬! ノート写させてくれよ!』
『何故いつも僕なんだ』
『永瀬のノートが一番綺麗で見やすいからだよ』
調子の良いことばかり言って何度ノートを写させたことか。