前世での誓い





「西村さんには、謝らないといけなくてね」


「…謝る?」


「実は、金曜日の話のことなんだけど」





金曜日というワードだけで、心臓が止まりそうになる。クビの話だと瞬時に察して、衝撃に備えて両手を爪で皮膚を抉りそうな強さで握る。





「本当に申し訳ない!西村さん違いで、君はクビじゃないんだ…」


「……えっ、は?」





西村という苗字はそう珍しいわけではないので、社内にも数人、同じ苗字の人が居る。男性も女性も。


部長の話では、クビになる西村さんは別部署の男性の西村さんだったらしく、それを部長が西村という苗字を見ただけで早とちりして、私に話が行ってしまったらしい。




「じゃあ、私は辞めなくて良いんですか?」


「本っ当にごめんね、そうなんだ。だから、来月からもよろしく。あと…」






余計な力が入ったような、全身の体の硬直が一気に消えたような、どちらか分からない感覚に襲われている。クビにはならなかったけど、代わりに私じゃない西村さんがクビになるってこと。その人は週明け早々、私が金曜日に味わった感情を味わうことになる。


それを考えると、素直に喜びきれない。そしてそれに重ねて、新入社員の教育係を任されてしまったのも、感情に表し切れない。金曜日の話がなかったら、ただの光栄な話なのに。



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