『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
「困っていたので助かりました。ここで飲まれていたんですよね。出てきてしまって、よかったんでしょうか」

 会計を終えて店の外に出るなり、紗月は頭を下げた。

「気にしないでください」

 返ってきた声は、先ほど学生ふたりをあっさりと退けたときと同じ、硬く平坦な口調だった。

 聞くと彼は仕事帰りにひとりで入店しカウンターに座ったが、飲み始めてすぐに紗月が絡まれているのに気づいたらしい。

 少し硬い雰囲気の人だと思いながら、改めて彼の顔を見た紗月は、思わず目を丸くした。あまりにも整った顔立ちだったからだ。

 均整の取れた輪郭にまっすぐに通った鼻筋。切れ長の瞳に長めの睫が自然な陰影をつくっている。凛とした眉のラインも印象的だ。

 黒髪は軽く撫でつけられて、形のいい額を出したスタイルだ。街灯の光を受けてさらりとした艶が浮かび、無造作に見えて計算されたような清潔感がある。

 見上げるほどの高身長、長い手足に仕立てのいいスーツが馴染み、無駄のないラインが彼の体格の良さをいっそう際立たせていた。

(立っているだけですごく絵になる人だな)
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