『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
《永井さん、課長にパワハラされてたの、愚痴を言うだけじゃなくてきちんと訴えればよかったって後悔してます。ごめんなさい》

『そう思ってくれているだけで嬉しいよ。でも、うちの相談窓口、機能していなかったから』

 訴えても人事部長で止められた経験があると説明する。

《実は、同じような対応された人が他にもいるみたいで、これまでのセクハラパワハラについても再調査がされているんです……今さらですが、永井さんの件、公にしてもいいでしょうか》

『うん、構わないよ』

 紗月は、自分が課長から受けたハラスメントや、人事部長の対応を説明した。少し前までは思い出すことさえ辛い記憶だったはずなのに、不思議と客観的に言葉にできている。そう気づいたとき、紗月は自分が乗り越えられたのだと実感した。

 セクハラまでされていたとは知らなかった木村は驚き、必ず課長を追い詰めますからと息巻いていた。

《それにしても永井さん、声がずいぶん明るくなりましたね。新婚生活が楽しいからですか?》

『ま、まぁ順調かな。木村さんこそ、彼氏とはどうなの?』
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