『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
「紗月の頼んだ方にはポーチドエッグ、ついてなかっただろ」

「……あ、うん。ありがとう」

(やだ、物欲しそうに見てると思われたかな)

 意地汚くて恥ずかしいが、彼の頼んだモーニングセットも美味しそうに見えていたのは確かだ。すると航生はナイフとフォークを使って器用にトーストの端を小さく切り取り、とろりとした黄身を絡めた。

 しかし、こちらの皿に乗せてくれると思ったトーストは、フォークに刺されたままこちらに差し出された。

「はい、どうぞ。もう熱くないと思う」

「で、でも……」

(こ、これは、〝あーん〟で食べてってことだよね)

 ほぼ満席の店内で、このシチュエーションは恥ずかしすぎる。そして、周囲から羨望と生暖かい視線が浴びせられている気もする。

「ほら、黄身が落ちるから」

 悪意のない笑顔を向けられたら無下に断るのは申し訳ない気持ちになる。

 頬を熱くしながら、紗月は口を小さく開けてフォークを迎えにいく。口に入ったトーストはちょうどいい大きさで、卵黄がたっぷり絡まっていた。

「あ、ありがとう。美味しいね」
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