『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
その直後から航生はガラリと生き方を変えた。すべてにおいて手を抜き始めたのだ。テストではあえて全問正解しないように調整し、悪すぎず良すぎない成績を取った。当時所属していたバレーボール部も肩を痛めたと嘘をついて辞め、やたらと人に褒められる顔も注目されないように、伊達眼鏡と厚く伸ばした前髪で隠すようになった。高い身長を誤魔化したくて背中を丸めるのが癖になった。
とにかく、目立たないように気を配った。そのおかげか自分勝手な大人からの連絡は途絶えた。
高校もそこそこのレベルの都立を選び、親しい友人も作らず部活にも入らなかった。そういう奴だと思わせてしまえば変に絡まれない。楽な立ち位置を手に入れた航生はこれからも平和な毎日を過ごせると思っていた。
変わってしまった息子に母は複雑な顔をしていたが、あの頃が自分たち親子にとって一番穏やかで幸せな時間だった。しかし、その日々は長くは続かなかった。高校三年の春、母は病に倒れたのだ。
一年もたないかもしれないと医師に告げられても、母は取り乱すことなく、『これも運命なのかもしれないわ』と静かに受け止めていた。
とにかく、目立たないように気を配った。そのおかげか自分勝手な大人からの連絡は途絶えた。
高校もそこそこのレベルの都立を選び、親しい友人も作らず部活にも入らなかった。そういう奴だと思わせてしまえば変に絡まれない。楽な立ち位置を手に入れた航生はこれからも平和な毎日を過ごせると思っていた。
変わってしまった息子に母は複雑な顔をしていたが、あの頃が自分たち親子にとって一番穏やかで幸せな時間だった。しかし、その日々は長くは続かなかった。高校三年の春、母は病に倒れたのだ。
一年もたないかもしれないと医師に告げられても、母は取り乱すことなく、『これも運命なのかもしれないわ』と静かに受け止めていた。