『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 紗月の明るさがどこか空回りしているように感じた航生。見て見ぬふりもできたが、思い切って違和感を口にすると、彼女は本音を零した。

『……私、昔から永井家の異端児なんだ』

 永井家紗月以外の家族は楽天的なお人好しで、紗月がしっかりせざるを得ない状況らしい。昨日も突然転職を決めたと言い出した父親に対して紗月だけ喜べなかったという。

『家族のためにがんばれる永井は、すごいと思う』

 複雑な心境を笑顔で誤魔化そうとしている紗月に航生はそう声を掛けた。

 彼女の複雑な感情の裏側には家族への愛情があった。温かい家庭と無縁で育った航生にはそれが眩しいほど羨ましかったし、応援したいと思った。

 まさか航生に褒められると思っていなかったのだろう。紗月は虚をつかれたような表情をしていた。

『でも、がんばりすぎるなよ、永井っていつも一生懸命だからちょっと心配になる』

 普段なら絶対口にしないような言葉が飛び出し自分でも驚いたが、止められなかった。
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