『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 紗月は真面目なのだ。勉強への向き合い方を見ればすぐにわかるし、三年になって誰もやりたがらない学級委員を引き受け、きちんと役目を果たしているところにも、苦労性の一面が表れていた。

 その誠実さが、いつか彼女を苦しめないか訳もなく心配になった。

『ありがとう。そういうふうに言ってもらえて、嬉しい』

 紗月は頬を赤くして俯いた。そのはにかんだ顔を見て、なぜか航生の心臓が小さく跳ねた。
 
 二学期になってから、航生の周辺は少し変わった。紗月と仲良くなった航生の存在がクラスの中で認知され始めたのだ。数学を教えてほしいと頼んでくるクラスメイトも出始めた。

 しかも、文化祭では紗月に強引にクラスの企画メンバーに入れられ、模擬店の準備をする羽目になった。

 他クラスの出店傾向や例年の実績を調べて、材料の仕入れや販売数を決めるとうまく嵌り、航生たちのクラスは歴代一位の売り上げを叩き出した。

『島君のおかげで、最後の文化祭が最高な形になったよ。ありがとう』

 そう言って紗月は心底嬉しそうに笑っていた。
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