『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
『永井さん、元気にしている?』

『うん、元気だよ』

 母が起きている間はふたりで取り留めのない話をした。天気の話からテレビで見た最近の流行り、学校のこと。その中で紗月の話題が上る機会も多かった。

『あの子はとってもいい子ね。素直で優しくて、お母さん、すごく好きよ……また、会いたいわ』

『そうだね。また誘ってみる』

 そう返したものの、航生は紗月をしばらくここに呼ぶつもりはなかった。紗月は今受験勉強の追い込みだ。最後の試験が終わるまでは邪魔をしてはいけない。

 それを言うなら自分も受験生なのだが、すでにできうる対策はすべて終えてあったので今は復習程度に参考書を眺めるくらいだった。
 今の学力なら入れない大学はないと客観的に把握していた航生は、奨学金制度を利用して進学するつもりでいて、母にもそう説明していた。

(永井、大丈夫かな。ここのところ、ずっと連絡してなかったからたまには電話くらい……いや、やっぱり気を使わせるか)

 病院帰り、駅に向かいながら航生は空き教室で勉強しているはずの紗月に思いを馳せる航生。すると兄から電話がかかってきた。

『航生、今いいか?』

『はい、構いません』
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