『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 理仁は以前も典子の目を盗んで母の見舞いに来てくれた。病状を心配してくれての電話かと思い足を止める。

『前に病院で航生と一緒にいた子、永井紗月さんの話なんだけど』

『……永井がどうかしましたか?』

『実は、困ってるんだ。どこで連絡先を手に入れたのかわからないんだけど、病院で会った少しあとに彼女から連絡が来て、告白されたんだ。航生、あの子に自分の出自話した?』

 思いもしなかった話題に咄嗟に声が返せなかった。

『〝私、お兄さんに一目ぼれしたんです。それに、大きな会社の跡取りなんてかっこいいです〟って。僕には婚約者がいるからって断ったんだけど、諦めてもらえなくて……航生の友達だから今まで黙って我慢してたんだけど』

(永井が兄さんに告白して、言い寄っている?)

『まさか……』

 そんなはずはないと、否定しようとした声は兄に遮られる。

『恋人にしてくれなければ、航生の秘密をぜんぶ学校で話すって脅されてるんだ』

 血が凍る感覚がした。

『それで、明日直接会ってやめるように説得するつもりなんだ。一応航生にも知らせておくね』
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