『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 理仁は十八時頃に高校の最寄り駅のコーヒーショップで紗月と話す予定だと続けた。

『ああ、でも航生は来ない方がいいよ。彼女が変に逆上しても困るからね。僕がなんとかしておく……でも、もうあの子とは関わらない方がいい』

 やけに冷たく響く言葉を最後に、兄は電話を切った。しかし、航生はしばらくその場から動けない。

 紗月が兄に言い寄って、航生を盾に交際を迫っている。信じられなかったし、信じたくなかった。

 たしかに兄は容姿が整っていて、女性にも人気がある。なんといっても大須賀家の正式な後継者だ。紗月が心奪われても無理はない。
 いつか、紗月が『お兄さん素敵な人だね』と感心していたのを思い出して胸が苦しくなる。

(永井が人を脅すような行動をとるなんて……でも、兄さんが俺に嘘をつくはずがない)

 一晩悩んだ翌日、我慢できなくなった航生は駅前のコーヒーショップに足を向けていた。

 十八時を少し過ぎた頃、店の外で隠れるように様子をうかがっていると、理仁と紗月が現れて店内に入っていった。
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