『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 入手した報告書には、紗月の出身大学や勤務先、住んでいるアパートなどの項目が簡潔にまとめられていた。

 第一志望だった大学に進めていたと知り、航生は安堵した。

 そして、結婚の事実および恋人の存在は確認されず、という一文に視線が留まったとき、胸の奥が熱を帯びた。

 紗月は誰のものにもなっていない。その事実に、航生は自分でも驚くほど高揚していると気づく。

 七年以上経っても航生は少しも、紗月を忘れられていなかったのだ。それどころか、憎しみから後悔、懺悔と感情が移り変わる中、想いはどんどん煮詰まっていた。

(永井に、会いたい)

 渇望に突き動かされ、航生は紗月のもとへ向かう決意を固めた。だが、今の自分のままではだめだ。変わらなければならない。

 ――誰にも負けない強さを手に入れたら。なにからも逃げずにいられるようになったら。真正面から君と向き合いたいし、君にも俺を見てほしい。

 いつか紗月の隣で抱いた希望を、今度こそ現実にする。もう、誰にも邪魔はさせない。

 航生は髪を切り、伊達眼鏡を外し自ら現場の最前線に赴き指揮をとるようになった。本気を出し始めたのだ。その頃出会ったのが土方だ。
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