『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 信頼できる部下を得た航生は『いずれOGセラミックの経営者になるつもりだ』と打ち明け、協力を求めた。

 手始めはそのあとすぐに転勤になった新興国。社を上げて素材事業の参入を進めていて、収益は登り調子で周囲は事業拡大一択のムードだったが、航生だけがストップをかけた。

『そろそろ、為替の規制がくる可能性がある。その前に見切りをつけた方がいい』

 反対を押し切って段階撤退を強行した半年後、その国では外資が規制強化され通貨が暴落した。競合他社はかなりの損失を出したがOGセラミックはうまく利益だけを得ることができたのだ。

 その後赴任したどの国でも事業を整理、または立ち上げてすべて成功させた。

 海外で次々と成果を出しつつ『そろそろ日本で仕事をさせてもらいたい』と打診すると、目論見通り、父から帰国が許された。



「わかった、この内容で進めよう」

 その日の午後。社長室のソファーで資料に目を通していた、OGセラミックの代表取締役社長、大須賀勝一はゆっくりうなずいた。

「ありがとうございます」

 向かいに腰掛けていた航生は軽く頭を下げる。
< 144 / 235 >

この作品をシェア

pagetop