『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 幼い頃〝なかったもの〟として扱われていた航生。今は父にとって必要不可欠な存在となっている。
 しかし、嬉しいとは少しも思わなかった。


 社長とのミーティングを終えた航生は再び執務室で土方に迎えられる。

「お疲れ様です。シンガポールの件どうでしたか」

「ああ、あっさり納得してくれたよ」

 執務椅子に腰掛けながら当たり前のように答える。

「最近社長、重要な案件も判断を室長に頼り切りですもんねぇ。しかし、あなたの未来を予測する力はどこから来るんですか」

「占い師みたいに言わないでくれ。情報を取り入れて冷静に分析しているだけだ」

 世界中の社会情勢や外交、気象や災害、あらゆる物の値段や傾向を把握して、最適な投資計画を打つ。やっているのは文化祭での模擬店の企画と変わらない。

「そうかもしれませんが、あなたのはちょっと異常なレベルなんですよ。目論見はことごとく当たるし、誰も論破できないですからね。この前もバイオ素材の重点施策をまだ早いって渋る重役をやり込めていたじゃないですか。『それは感想ですね。データに基づいた事実を言ってください』って」
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