『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 肉は鶏肉、野菜はトマトとカボチャが好きで、揚げ物など油の多い料理は少量で十分なこと。甘いものはなんでも食べるが、華やかなケーキよりも素朴な焼き菓子やプリンが好きなこと。

 服装に派手さは求めず着心地優先のようで、家では柔らかなニットや揺れ感のあるスカートを身につけている。

 見かけると足を止めてしまうほど動物が好きで、特に猫には目がなく、テレビ画面に映る度に『かわいい』と頬を緩めている。航生はそんな紗月がなによりもかわいいと思っている。

(情報を集める癖のせいだろうか。紗月のこととなると、どんな些細なことでも、いくらでも知りたくなってしまうな)

 学生時代に知っていたのは、三人姉妹でココアを好むらしいという乏しい情報だけだった。こうして紗月を形づくる細部がひとつずつ増えていくたびに、航生の胸に満足感が積み重なっていく。

 表情を緩めた上司が珍しかったのか、近くでパソコンに向かっていた土方が訝しげな顔になる。

「どうしたんですか、急ににやけちゃって。ていうか、普段から少しそのくらい表情が柔らかければ周りから怖がられないで済むんですけどね」
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