『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 でも、週が明けたら日常が戻ってくる。どんなに業務量が多くても、ミスなく終わらせて当たり前。落ち度があったときだけ激しく叱責されるプレッシャーを受ける日々が。

(それに、また課長に言い寄られたら……)

「もっと食べたら?」

「え……」

 暗い考えに沈んでいた紗月は大須賀の声で我に返る。

「さっきから、食事に全然手を付けていない」

 テーブルには彼が頼んでくれたバーニャカウダや、牛肉の赤ワイン煮込み、マルゲリータピザが並んでいる。

 見た目はとても美味しそうなのだが、ここ最近ずっと食欲がなかった紗月は少し食べただけでお腹がいっぱいになっていた。

「さっき居酒屋で食べたから。大須賀さんこそお腹空いているでしょう、いっぱい食べて」

 笑顔を作るが、彼は困ったように息をついた。

「さっきの店ではお通しにも箸をつけてなかったようだけど」

「えっ……」

(そんなところまで見られてたんだ……もしかして大須賀さん、あの店で私の近くの席に座ってたのかな)

「実は、ここのところあんまり食欲がなくて」

「……だから、そんなに痩せてしまったんだ」
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