『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
「でも、それってある意味束縛じゃないですか? どんなにイケメンでお金があってもその内嫌われますよ」

 嫌われる。その言葉が航生の心臓を軽く刺した。

(たしかに、いつまでも紗月の希望を無視し続けるのはよくないな)

 航生は平静を装って無言でパソコンに向かい続ける。

「それにしても、室長から〝心配〟って単語が飛び出すとは。本当に奥さんが大事で仕方ないんですね。そんなにラブラブってことは、学生時代の室長のやらかし、彼女はすぐに許してくれたんですね」

 土方がなにげなく投げかけきた問いに、キーボートを操作する手が止まる。

「あれ? たしか昔、酷い暴言吐いて奥さん傷つけたって言ってましたよね」

「……それは事実だが、彼女には謝っていない」

 ややあった沈黙のあと、仕方なく航生は口を開いた。

「えっ、噓でしょう⁉ プロポーズ、よく受け入れて貰えましたね」

 零れ落ちそうなほど目を丸くする腹心の部下。観念した航生はこれまで詳しく語ってこなかった結婚の事情を明かした。

「契約結婚って、室長は奥さんを好きなんですよね。なんで誤解を解いて謝らないんですか。まさか、プライドですか?」
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