『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 紙袋から顔を上げた紗月は眉を下げて複雑な顔になっていた。遠慮もあるだろうし、体重が増えるのも気にしているのかもしれない。

 気を使わなくていいし、俺はどんなに君が太っていても構わないんだが。そう思いながら「俺も食べたいから気にしないで」と軽く返す。

(ジムにも通ってるんだから、神経質にならなくていいのに)

 再会したときは心配になるくらい痩せていた紗月だったが、徐々に食欲が戻り、体重も増えはじめた。それを気にしている様子だったので、気分転換にもなるとジムに誘い共に入会した。立地や設備はもちろん、トレーナーや客層も調べ上げて厳選した施設だ。

 航生も時間を作って足を運んでいるが、真面目な紗月はコンスタントに通って成果を出している。なぜわかるかというと、航生が毎日紗月を抱き寄せて寝ているからだ。

 彼女が悪夢で飛び起きた夜、怯えきった表情を見ていられなくて、航生は彼女を胸に引き寄せて寝かしつけた。あの日から毎晩同じようにして寝ている。

(触れた感覚で引き締まってきたのがわかる……なんて言ったら、変態か)

 リビングに戻っていく紗月の後ろ姿を眺めながら、航生は軽くため息をつく。
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