『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
「大須賀の名に恥じない家柄の妻を迎えるためよ。あなたでは無理」

 さっきは航生が大須賀を名乗るのも嫌だといっていたのに、勝手なものだ。

「航生さんは、そんな結婚は望んでいません」

 すると典子は蔑むような視線を返してきた。

「急に結婚なんて、どうせ、裏があるか金目当てなんでしょう。言い値で払ってあげるから、さっさと別れなさい」

 皮肉にも、典子の指摘は的を射ていた。自分たちの結婚は契約で、紗月は借金を肩代わりしてもらっている。

 もちろん別れるつもりなどない。この人の思惑どおりに離婚して、航生に意に沿わない結婚をさせるわけにはいかない。けれど、それは建前だ。

(私が航生君と離れたくない)

 自分の本心に気づいた紗月はグッと拳を握った。

「お断りします」

 ひと言、簡潔に拒絶の意思を示す。典子は不満を露にする。

「ずうずうしいのは、航生と同じね」

「航生さんと同じなら、よかったです」

 棘だらけの言葉も紗月は正面から受け流す。

 典子は小さく鼻で笑い、話題を切り替えるように口を開いた。

「理仁の帰国に合わせて、近々屋敷でパーティを開くの」

「パーティ、ですか」
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