『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 ラグジュアリーな空間に慣れていないのがバレないように、紗月は品よく見えるように意識しながら笑みを浮かべた。

 ここは、航生が『ここなら安心だ』と予約してくれた赤坂にある会員制のヘアメイクサロンだ。到着後すぐに通された個室にはパーティ用のドレスやバッグ、アクセサリーが何パターンも準備されていた。

 スタッフと相談しつつ選んだのは露出が多すぎないIラインのドレス。くすんだローズの色味が上品なロング丈で、上質なサテン生地が使われていた。

 十月初旬なので、夜の冷え込みを考慮してショールを合わせている。

 アクセサリーはあえて控えめに。華奢なチェーンに大きな一粒ダイヤが輝くネックレスだけを選んだ。低めの位置でシニヨンにしたヘアスタイルは首元がすっきり開いていて似合うと思ったからだ。

『元々のお肌が綺麗なので、メイクは薄めに仕上げますね』

 スタッフにそう言われて少し不安になったが、さすがプロだ。しっかりとポイントを押さえつつパーティに出席してもおかしくない上品かつ華やかなメイクに仕上げてくれた。
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