『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 ヌーディな色味の七センチヒールを履き、小ぶりのクラッチバッグを手に取ったら、余裕を纏った大人の女性に見えてくるから不思議だった。

(なんだかスタイルがすごくよく見える。それに私の肌ってこんなに綺麗だったっけ……)

 ここ二週間、スイーツと外食を絶ち、ジムに通う頻度を増やしたのが良かったのだろうか。

「ご用意いただいたアイテム、どれもお品が良くて悩みましたけどこちらにして正解ですね。奥様の大人かわいい雰囲気にとても合っています」

 紗月の横に立ったスタイリストが、一緒に姿見を覗き込みながら褒めてくれる。

(ところで、私の身に着けているこれは、ぜんぶレンタルですよね……?)

 そう尋ねようとしたものの、聞かない方がいい気がして紗月は「綺麗に仕上げていただいて、ありがとうございます」と鏡越しに笑顔を返した。

 さきほどスタイリストが言っていたように、事前に用意されていたドレスやアクセサリーは素人目にも高級品に見える。今胸元で煌めいているネックレレスなんて、買ったらいったいいくらするのだろうか。

 支払いは事前に航生が終えているらしく、紗月は金額や内訳を知らなかった。
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