『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 驚きと甘さが滲んだ静かな声に、紗月ははっと我に返る。

「航生君?」

「俺の想像を超えるくらい綺麗で動揺してる。パーティなんて行かないで、このまま君とデートしたいんだけど」

 スタッフが見守る中ストレートに褒められて、顔が熱くなる。

「も、もう、そういうわけにはいかないの、わかってるくせに」

 照れ隠しに軽く肩を竦めてみせると、航生は小さく息をつき、諦めたように「だよな」と笑った。

 
 パーティが始まるのは十八時からだ。ふたりともアルコールを取るつもりは無かったので、航生の運転で屋敷へ向かっていた。

「それにしても航生君、そのスーツすごく似合ってるね」

 日が落ちた幹線道路を走る車内で、紗月は航生の横顔に話しかけた。

「君に気合を入れてくるように言われたからそれなりに整えたつもり。問題無さそう?」

 赤信号で止まったタイミングで、航生が視線をこちらに向ける。運転しやすいようにジャケットを脱いだベスト姿も驚くほど様になっていた。

「もう、バッチリだよ」
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