『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 航生の話で初めて知ったのだが、身なりに気を配るようになったのはここ三年らしく、その間、父以外の親族とは直接顔を合わせてこなかったらしい。

 見た目を変えようと思ったのは、心境の変化だったようだが、それまでは高校のときとさして変わらない風貌だったと聞いて紗月は驚いた。

 典子は航生のことを、パッとしないだの、背が高いだけでぼんやりしているだのと散々貶していたのは、最近の彼を知らないからだろう。

 なら、かっこいい航生を思いきり見せつけてやればいい。そう考えた紗月は、当日の服装にはぜひ気合を入れてほしいと頼んでいた。

 もともと、立っているだけで自然と人目を引く容姿を持つ彼だ。本気を出したら、どれほどのものになるのか。楽しみにしていたのだが、実際は期待を軽々と上回ってきた。

 こんなにも完璧な人の隣に、妻として立つのだと思うと、紗月はあらためて背筋が伸びる思いがした。

 都心の高台、旧邸宅が立ち並ぶエリアの一角に、大須賀家の屋敷は佇んでいた。車は重厚な門をくぐり、来客用の駐車場へと滑り込んでいく。

(ここが、航生君の実家……)
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