『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 海外暮らしが長かったから会えなくても無理はないと思っていたが、航生が言っていた〝心境の変化〟があったとき、なにも相談していなかったのだろうか。

「でも、お兄さんが帰国しただけで、これほどまでのパーティを開くなんてすごいんだね」

「まぁ、大事な跡取りだからな」

 さらに話題を振ってみても、いつもの航生とは思えないほどそっけない返事が戻ってくる。理仁と距離を置いているかのような空気に、妙な胸騒ぎを覚えていると、背中をそっと押される。

「――さて、面倒な話を早く終わらせようか」

(面倒な話っていうのは……お義父様へのご挨拶ね)

 無言で顎を引いた紗月を先導するように、航生は長い脚でゆったりと歩き出す。勝一たちの輪に近づくと、穏やかな笑みを浮かべた。

「本日は、ご招待ありがとうございます」

「お前がこういう場に来るのは珍しいな」

 シャンパングラスを片手に、こちらを見たのは勝一だ。

「はい。せっかくの機会ですから、ご紹介させていただこうと思いまして――妻の紗月です」

 その場にいた全員の視線が一斉に紗月へ集まる。向けられる眼差しは、値踏みするようなものか、あるいはあからさまな敵意だった。
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