『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
「あのとき、あなたは紗月からしつこく交際を迫られていて、断れば俺に関する噂をばらまくと脅されていると困っていた。実際、その直後に学校中へ噂が広まった」

「え……私、そんなことしていない!」

 紗月が声を上げると、航生は「わかってる」と紗月に優しくうなずいた。

「俺の噂を流したのは、俺たちと同学年の女子だ。兄さんの友人の妹で、当時、男女の関係だった」

「へぇ……そんなことまで調べてるんだ」

 理仁の表情は余裕を保ったままだ。

「もしかして、あのときの話も嘘? でも、メッセージが……」

 紗月は驚きつつ、理仁にコーヒーショップへ連れていかれ、航生が紗月につき纏われて困って兄へ相談するやり取りを見せられた経緯を説明する。

「メッセージの偽造なんて、いくらでもできる。俺も君も騙されたんだよ。この人に」

「そんな……」

 航生が紗月を冷たく突き放したのは、つき纏われて嫌気がさしたからではなかった。理仁に嵌められた結果だったのだ。信じられない気持ちで理仁を見ると、彼はわざとらしく肩を竦めた。

「あんなに素直だった航生が、こんなに反抗的になるとは思わなかったよ」

「俺の話に間違いはありませんか?」
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