『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
「航生君が、好き。私が隣にいていいなら、ずっと、航生君の奥さんでいたい」

 胸の奥に閉じ込めてきた想いを、すべて吐き出した、その瞬間だった。紗月の上半身は強く引き寄せられる。

 逃がす気などないと言わんばかりにきつく回された腕の中、彼の鼓動が少し早く刻まれているのが伝わってくる。

「隣にいてほしいのは、紗月だけだ」

「……うん」

 航生は抱きしめる力を緩めて、紗月の顔を覗き込んだ。

 片手で顎をすくい上げられ、視線が交差した瞬間紗月の心臓がトクンと跳ねる。

 表情を緩めた航生は、ゆったりと目を細めながら、その端整な顔を傾けた。紗月も目を閉じて彼の吐息を受け入れる。

 柔らかく重なった唇は驚くほど甘かった。一度離れ、足りないかのように再び触れ合う。

「……ん」

「紗月……」

 優しく触れるだけだったキスは、想いを注ぎ、確かめ合うように変わっていく。

 航生はためらいを捨てたように角度を変え、ゆっくりと深く口づけてきた。紗月の体を包み込む腕に力がこもり、逃げ場を失った紗月の背中に彼の体温が伝わってくる。

 紗月はそっと目を閉じ、彼の胸元に掌を添わせながらその熱を受け止めた。
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