『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 パーティでは、ふたりともほとんど食事に手をつけず、ソフトドリンクだけだったので、帰りの車中で彼と相談して決めた中華を紗月が注文しておいたのだ。

「ありがとう。じゃあ、すぐに入ってくるね」

 ドレスを脱いでさっぱりしたかった紗月は、お言葉に甘えさせてもらい早々にバスルームに向かう。

 ちなみにこのドレスも一式、さらにサロンに候補として並んでいたアクセサリーから靴に至るまですべて航生が買い取ったらしい。

『また、着る機会があるかもしれないから、いくつかもっておけばいいじゃないか。気に入らなかった?』

 帰りの車中で当然のような顔をする航生に、紗月は慌てて『滅相もございません』と返した。

 バスルームで紗月は慎重に身に着けていたものを脱ぎ。なんとも言えない気持ちでシャワーを浴びる。

(それはそれとして、私、空気を壊しまくってたよね……)

 紗月がドレスはレンタルなのかと聞いてみたり、お腹が空いたとか、夕食はなににしようかとなど色気のない話を続けてしまったせいだろう。マンションに帰りつくころには、ふたりの間にあった甘い空気はすっかり消えていた。
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