『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
(だって、あんなキスのあとに『続きは帰ってからでいい?』なんて色気たっぷりに言われたら、意識しちゃうよ)

 妙にテンションが高くなってしまったのは、車中の無言が気恥ずかしかったからだ。きっと、航生も気づいていたと思う。

 一度は体を重ねているのだから、今さら動揺するなんて情けない。大人の女性らしく、余裕のある振る舞いをしたかった。

(これだから、恋愛初心者は……)

 自分に呆れながら、紗月はシャワーの水圧を強くした。

 紗月と交代するように航生も入浴を終え、ビールで軽く乾杯して食事を始める。

「そういえば、紗月に再会する少し前に、会社の近くで偶然林原(はやしばら)に会ったんだ」

 チンジャオロースを皿に取り分けながら航生が口を開く。

「林原君? 懐かしいね」

 林原は、紗月たちと同級生で、文化祭で企画メンバーだった男子生徒だ。きっと、以前麻由のメッセージにあった〝偶然島君と会った子〟とは、林原だったのだろう。

「最初全然俺だとわかってもらえなかったよ。さりげなく紗月のことを聞いたら、同級会にもしばらく来ていないって言ってた」
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