『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
「飲み始めたきっかけは、あなたが長年交際している元モデルの女性でしたね。彼女に勧められて、軽い気持ちで飲み始めたんでしょう。でも、気づけば依存していた」

 全員が息を詰める中、航生の声だけが淡々と落ちていく。

「ただ、残念ながら彼女の背後にはたちの悪い連中がいた。脅されたあなたは、彼らの用意したペーパーカンパニーに資金を流し続けていた。無理もありませんね。違法薬物に手を出しているのが公になったら、大手化学メーカーの後継者にとって致命的ですから」

(理仁さんが、違法薬物……もしかしたら情緒不安定なのは、そのせいなのかも)

 紗月は初めて知る事実に驚きながら、無言で立ちすくむ理仁に視線向けた。

「おい理仁、本当なのか!」

「嘘でしょう? あなたが、薬物なんて、そんなわけないわ。航生の作り話よ!」

 勝一が顔色を変えて立ち上がり、典子はわなわなと震えている。その様子に、理仁のスキャンダルがいかに深刻であるかが伝わってくる。

「違う……違うんです。航生が僕を陥れようとしているだけで……クソ、航生、出しゃばるな! 僕の邪魔をするなっ!」
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