『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 目を血走らせて掴みかかろうとする理仁の手首を、航生はあっさりと掴み取り、動きを封じた。

「僕は情報を集めるのが得意なんです。作り話かどうかは、証言も証拠もありますから、いくらでも提示できます。ああ、それと、あなたが囲っていたその元モデルの女性ですがマンションから出ていきましたよ。なんでも愛人にはなりたくないそうです」

「理仁、あなた、もうすぐ結婚するのに女を囲っていたっていうの⁉」

 悲痛な声を上げる典子。しかし、もう息子には聞こえていないようだ。

「彼女が……嘘だろ。今までどれほどまでの金を使ったかと思ってるんだ!」

 膝から崩れ落ちた理仁は、観念したのか、その場に座り込み拳を床に押し付けている。

「自ら出て行ってくれてよかったですね、お義母さん。下手をしたらあなたの息子があなたの大嫌いな〝愛人〟を作るところだった」

 そう言うと、航生は笑みを深め、典子――そして、勝一を見た。

 せめてもの、航生からの意趣返しだったのだろう。勝一は、グッと息を飲むと居心地が悪そうに視線を逸らした。
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