『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
「本心だけどね」

 そう言って航生は、少しだけ困ったように笑ってみせた。

 寄り添いながらしばらく会話を続けていると、紗月からの返事が緩慢になってきた。

「眠いのか?」

「うん……」

 顔を覗き込むと、彼女の瞼はだいぶ重くなっていた。

「やっぱり疲れたんだな。ベッドにいこうか」

「……でも、歯磨きしてない……」

 必死に睡魔と闘っている表情がかわいくて仕方がない。微笑ましく見守っているうちに、紗月の頭がゆっくりと航生の肩へ預けられていく。その重みは、航生にとってなによりも幸せなものだった。

 こうして、なにも考えずにすべてを委ねていてほしい。いつでも手の届く、守れる場所で。

「……紗月、俺は君が思ってるよりかなり重い男だよ」

 規則的な息を始めた紗月の髪に頬を寄せて、小さく囁く。

 きっと紗月は、今の生活が航生に頼りきりだと気にしている。だから家事も仕事も積極的に取り組もうとしているのだ。真面目で向上心があるのは彼女の美徳で、航生も愛しく思っている――それでも。

「俺は紗月に依存されたい。君が俺なしじゃいられなくなるくらいに」
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