『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
「は、はい! 今行きます」
紗月は弾かれるようにカウンターに向かう。背後では坂本の小さな舌打ちが聞こえた。
問い合わせに対応している間に、坂本はさっさと帰っていった。
仕事を片付けた紗月が衝動的に飛び込んだのは会社の最寄り駅の神田にほど近いチェーンの大衆居酒屋。やるせない感情も賑やかな場所で飲んだらまぎれるかもしれないと思ったのだ。
(会社帰りにコンビニ以外に寄るの、いつぶりだろう……)
カウンターの席でビールを注文し半分ほど煽る。
「……はぁ」
爽快な苦味を喉に流し込んでも気分は晴れない。思わず盛大な溜息が出てしまったが、店内は若い客で騒がしく、こちらに気づく様子はない。
金曜の夜、解放感に浸ってもいいはずなのにちっとも気持ちは晴れない。お通しに出された酢の物に箸を付ける気にもならず、紗月は遠い目になった。
働き方改革やワークライフバランスが推進される世の中になり、今企業はこぞって就業環境を改善しようとしている。しかし、紗月が勤めるシステム開発会社、『株式会社ブランチソリューションズ』には、その考えは存在しなかった。
紗月は弾かれるようにカウンターに向かう。背後では坂本の小さな舌打ちが聞こえた。
問い合わせに対応している間に、坂本はさっさと帰っていった。
仕事を片付けた紗月が衝動的に飛び込んだのは会社の最寄り駅の神田にほど近いチェーンの大衆居酒屋。やるせない感情も賑やかな場所で飲んだらまぎれるかもしれないと思ったのだ。
(会社帰りにコンビニ以外に寄るの、いつぶりだろう……)
カウンターの席でビールを注文し半分ほど煽る。
「……はぁ」
爽快な苦味を喉に流し込んでも気分は晴れない。思わず盛大な溜息が出てしまったが、店内は若い客で騒がしく、こちらに気づく様子はない。
金曜の夜、解放感に浸ってもいいはずなのにちっとも気持ちは晴れない。お通しに出された酢の物に箸を付ける気にもならず、紗月は遠い目になった。
働き方改革やワークライフバランスが推進される世の中になり、今企業はこぞって就業環境を改善しようとしている。しかし、紗月が勤めるシステム開発会社、『株式会社ブランチソリューションズ』には、その考えは存在しなかった。