『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
2.まさかのプロポーズ
公園で航生が自分の生い立ちを明かしてくれてから、紗月と航生の距離は確実に近づいていった。

『そろそろ過去問やり込んだ方がいいと思う。問題集持ってるか?』

『持ってるけど、他のも見てみたいから帰りに本屋さんに寄ろうかな』

『俺も付き合う』

 放課後は必ずふたりで勉強し、駅まで一緒に帰る。何度か航生の母のお見舞いにも付き合った。紗月は航生のそばにいると安らぎを覚える反面、ふわふわと心が浮き立つ気持ちになり、やがて彼に恋をしていると自覚する。

 陰キャで猫背だろうと、顔立ちがちゃんと見えなかろうと、かっこいいと思えるのだから恋心というのは不思議なものだ。

 麻由に航生への気持ちを打ち明けると『なんでよりによって島くん⁉』と驚かれてしまったが、彼の良さは自分にだけ分かればいいと思っていた。

(もしかしたら、島君も私をそれなりに意識してくれてるかも)

 彼の態度の端々に優しさを感じたし、なにより個人的な事情を話してくれたのは特別に思っているからではと、胸をときめかせていた。

 でも、紗月は彼に告白つもりはなかった。自分たちは受験生だ。それに、病気の母を支えている航生に思いを伝えるのは無神経だ。
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