『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 自分は彼がなんでも打ち明けられる友達でいよう。いつか想いを伝えられる日が来るまで、この気持ちはそっと胸にしまっておく。そう決めて彼の近くに居続けた。

 しかし、冬休みに入ってしばらくすると、航生が学校にこなくなった。

(島君、どうしてるかな)

 年が明け、ひとり教室で受験勉強の追い込みをしていた紗月は彼に想いを馳せた。

 母の容態が安定しないらしく、航生はずっと病院にいるようだ。負担にならないように紗月からの連絡は控えていたので、自然とやりとりは減っていた。

 紗月には、航生の母が少しでも長く航生との穏やかな時間が過ごせるように祈るしかできなかった。

 冬の日暮れは早い。暗くならないうちに帰ろうと駅へ向かって歩いていると、紗月に声を掛けてきた人物がいた。

『こんにちは』

『あなたは、島君の……』

 上質なコートを纏い、立ってたのは航生の兄、理仁だった。

『永井紗月さんだよね。航生のことで少しだけ時間もらえる?』

 そう言って誘われたのは駅の近くにあるチェーンのコーヒーショップだった。

(お兄さんがなんで私に?)

『なにがいい? 誘ったのはこっちだから奢るよ』
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