『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 言葉も表情も柔らかいが、理仁からは感情の温度を感じられなかった。

『す、すみません……じゃあ、ココアで』

 緊張しながらココアを受け取った紗月は、理仁に続いて窓際の席に着く。

『ごめんね。濁してもしょうがないから単刀直入に言うけど、もう、航生につき纏わないでもらえるかな』

 突然切り出された内容に紗月は目が点になった。

『え……』

『実は、少し前から航生に相談されていたんだ。君に困ってるって』

 理仁の口調は穏やかなままだ。

『島君が、そんなこと言うわけ……』

 なんの冗談だろうと思っていると、理仁はひとつため息をついて、スマートフォンの画面をこちらに見せてきた。

 画面には理仁と航生メッセージアプリのやりとりが表示されている。

《同級生の永井に勉強を教えろって、ずっとつき纏われてる》

《俺はそんなに暇じゃないのに》

《そう、兄さんも一度病院で会ってる。図々しくて嫌になる。なんとかならないかな》

《さすがに迷惑》

 すべて航生が理仁に向けたメッセージ、スクロールするたびに紗月への不満が並んでいた。信じたくなくて目を凝らしてアイコンを確認したが、間違いなく航生のものだった。
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