『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 母を亡くしたあと、航生は父の庇護下に置かれた。正式に大須賀家の次男として認められた形だ。

「学力の高い俺をゆくゆくは会社の駒として使いたい父親の思惑だった。金銭的な苦労をしないですんだのは助かったよ」

 大学を卒業しそのままOGセラミックに入社したが、一年経たないうちに中東拠点への異動を命じらその後はヨーロッパ各国を転々とした。

「父の本妻の差し金だった。俺はあの人に、ずっと疎まれているから」

 本妻の大須賀典子(のりこ)は航生の母を激しく憎み、その憎悪は幼い頃から航生自身にも向けられていた。だから、日本に置きたくなかったのだろう。

 それでも航生は着実に成果を積み重ね約四年後、父の判断で日本へ呼び戻された。帰国したのは、今から一か月前。

 現在は、経営戦略室長という肩書のもと、社長の直下で働いている。

 一方、典子は息子の理仁の立場を脅かしかねない存在として航生を強く警戒し、自分の思惑どおりに操れる遠縁の娘を航生の妻に据えようと、執拗に縁談を迫ってきているらしい。

「家柄がいいだけの女性には興味がないし、向こうの言いなりになるつもりはない」

「そっか……大変だったんだね」
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