『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 声は途切れ、車内はしんと静まり返った。

 「好きになれないのもわかってる」――その言葉が、なぜだかひどく切なかった。

(でも、島君は私に手を差し伸べてくれようとしてくれてる。そして、私も島君の役に立てるのなら)

 紗月は静寂の中、ゆっくり息を整える。胸の奥で揺れていた迷いは、徐々に覚悟へ変わった。

「……わかった。引き受ける」

 紗月は彼に向かってはっきり答えた。

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