『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
3.夫は過保護でした

「紗月さんとの結婚、お許しください」

 家族全員が揃った居間。隣で頭を下げる航生を紗月は信じられない気持ちで見ている。

『少しで早くご両親にご挨拶に行きたい。週末の予定を聞いてもらってもいいか』

 プロポーズを受けた車内で航生にそう言われ、紗月は驚いた。

 さすがに早いと尻込みしていると、『こういうのは早い方がいい』と説得された。

 プロポーズを受けたその場で実家に報告する人なんていないと頭を押さえつつ、紗月は実家に連絡を取り、結婚したい男性を紹介したいと打ち明けた。

 両親は大喜び。それから三日後の土曜日の昼下がり、航生を伴って東京西部の市にある実家に帰ってきたわけである。しかも到着すると家族全員揃っていた。

(当たり前のようにお姉ちゃんと乃愛までいるんだけど……お姉ちゃん、土曜仕事じゃなかったの?)

 俳優顔負けの容姿の整った男性が、きっちりとしたスーツに身を包み、老舗果物店の高級フルーツの詰め合わせを持って現れたものだから、家族全員同じような顔でポカンとしていた。

 そして、母が出してくれたお茶を飲み、軽く歓談した後突然航生は正座をして頭を下げたわけである。
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