『顔も見たくない』と振られた御曹司に十年越しで執着されていました
 しかも顔立ちが整っているから、その仕草が驚くほど自然で破壊力が高い。海外暮らしが長いとその分所作も洗練されるのだろうか。

(この人と結婚して、同居するなんて。私、やっていけるのかな)

 同級生だったはずの彼の変わりように戸惑いと胸の高鳴りを覚えながら、紗月はおずおずと手を預けた。



 約一か月後、紗月はソファーに腰掛けながらぼんやりと窓を眺めていた。

 ここは元々航生が住んでいたマンションで港区赤坂の高級レジデンスの一室だ。外資系企業のビルや大使館が点在する一帯で、華やかな印象の強い六本木に隣接しながら、夜になると住宅街らしい静けさが戻る。

 道路から一段奥まった位置に設置する18階の建物の15階の角部屋は広々とした2LDKに、仕事用に使える小さな個室が付いた造りだった。

 床から天井まである大きな窓から暮れ始めた東京の街が見える。

 いくら御曹司とはいえ、こんな超高級マンションに住めるものだろうか。

 引っ越しの下見に来たときにそれとなく尋ねたら、彼は大学生の頃から始めた投資でかなりの利益を手にしており、自分名義で購入していたという。
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