これは果たして恋なのか。
「じゃ、そんなわけでよろしく」
「うん」

これで会話が終わるかと思いきや。
「髪乾かすからこっち来て」

―?????

「え、髪?」
「うん、髪」

「蒼が?」
「俺が」

「私の?」
「お前の」

 今日は珍しいことがありまくりだ。

「明日は天地がひっくり返りそう…」
「なんでだよ。校外学習の件で世話になるし。こんくらいいいだろ」

 あぁ、お礼ね。
 そういうことなら、まだ分かる。私の髪は短いし、すぐ終わるだろう。

 洗面所の椅子に、蒼に背を向ける形で座る。
「じゃあ、お願いします」

「うん」
蒼がドライヤーのスイッチを入れて私の髪を触る。
 意外と手つきが優しい。おそるおそる、といった感じだ。

 お互い無言。ドライヤーの温風が心地いい。
 意外と人に髪を乾かしてもらうのって気持ちいいかも。
 ブオオー、とドライヤーの音が部屋に響く。

 ───あ、同じ構図だ。

 座る私と、私の髪をいじる蒼。 
 目の前の鏡を見ていると、中二の夏のある一夜が脳裏に浮いてきた。

 あれも、もう2年前か。時が経つのは早い。あの頃から変われていないわたしは時間に置き去りにされている。


 この短い髪は、私の弱さの象徴だ。

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