極甘社長にほだされても二度と秘書はやりたくない
会議室にたどりつくと難しそうな顔でPCを見ている女性と、腕を組んで考え込んでる宮川さんがいた。
藤沢さんが座ったを見て私も空いている席に座った。
すると目の前でPCを見ていた女性が顔をあげて笑顔を向けてくれる。
「あ、あなたが坂井さんね。広報の今野です、よろしくお願いします」
「坂井です。よろしくお願いします」
座ったまま軽く自己紹介をして頭を下げる。
難しそうな顔をしていたのとは反対に笑顔が素敵な女性だ。
「さて、詳細教えてくれるかな?」
藤沢さんの声にハッとしてモニター画面に視線を向けた。
そこには他社のプレスリリースの情報が映し出されている。
「これ、今日発表があったやつ。クラウドサービスとの連携とか保守はまぁいいとして、インターフェースのデザインと映像機能が全く同じだ」
「これって倉庫の映像管理するやつだよね」
「あぁ、うちで使ってる映像エンジンは日本で販売してる会社はまだなかったはずだ。なのに、この製品では使用されている」
画面に大きく映し出されたのは「この製品の特長!」とポップに書かれた部分で、
音声や映像の仕様が記載されている。
(む、難しい……!)
なんとか議事録を取りながら話についていくのがやっとだ。
「法務部に確認取ったんですが、あくまでも「契約時点ではいなかった」らしくて、そのあと契約が増えた可能性もある、と」
「それじゃあ正規の手続きってことだね」
「くそ、エンコードの速度で負けたか……」
宮川さんは大きく息を吐いて頭を抱えた。
藤沢んさんは真剣な表情をして他社の資料をじっと見つめている。
「先に情報を出されたら、どうやったってうちが模倣した形になってしまうね」
「はい……我々も製品発表会前に先にリリース打っておくべきでした。すみません……」
「いや、その判断をするのは俺だから、みんなは悪くないよ」
今野さんも責任を感じているのか声が沈んでいるようだ。
会議室の空気が重く感じてしまう。
「……仕様、変更するしかないな」
「えっ……今から!? 製品発表会もうすぐだよ? もう時間ないのに……」
ぼそりと小さくつぶやいた宮川さんの声に驚いたのは今野さんだ。
話し方からして親しい間柄なのかなと感じたが口を挟める雰囲気ではない。
「やるしかないだろ。開発者として類似品は出せない」
ぴしゃりと今野さんの言葉を遮るように力強い口調で宮川さんがそう告げた。
重かった会議室の空気が緊張を張り詰めている。藤沢さんは渋い表情を浮かべていた。