極甘社長にほだされても二度と秘書はやりたくない
一歩踏み出して、頬でも叩いてやろうと上げようとした手を大きな手で掴まれる。そのまま腰を抱き寄せられてその手はぎゅっと、恋人のように握られてしまった。
「藤沢、社長……」
「あぁ、藤沢社長。私、R&Mの代表をしております山川です。御社の製品いいですねぇ。今使用している製品の保証期間がきたら是非乗り換えを検討したいですよ」
藤沢さんが来ると山川さんは手の平を返したように態度を変えた。こうして仕事をしているときはまだ幾分マシな男に見えるだけ質が悪い。煮えくり返るような怒りをどうしたら良いか分からずに、握られた手にぎゅっと力を込めてしまう。
「是非ご検討ください。それと、うちの坂井が何かご迷惑でも?」
まるで大丈夫だとでも言うように藤沢さんも繋いだ手にぎゅっと力を込めてくれた。
「いえね。彼女、前職はうちの会社で秘書をしていたんですが、急に辞めてしまってね。そちらにご迷惑かけていないかと思いまして」
「とんでもない。とても優秀ですよ。それに、今一緒に生活していますが、頑張り屋ですし、何より可愛いところもたくさんありますし」
そう言うと藤沢さんは見せつけるように私の額に軽くキスをした。突然のできごとに驚くも、それは山川さんも同じなようで顔がひくついている。
「ふ、ふん。やっぱりそういう仲なんじゃないか。この女はそうやって取り入るのが上手いんだ。藤沢社長も騙されないように……」
「ご忠告ありがとうございます。でも、私からしてみると、彼女の魅力に気付けない貴方の方が、可哀想な気がしますけどね」
「ふ、藤沢さん……!」
さすがに言い過ぎではないかと顔を見上げると、藤沢さんはとても冷たい視線で山川さんに視線を向けていた。あの鋭い視線は宮川さんと製品の仕様変更をしていた時よりももっと冷酷な視線だ。
「かっこいい……」
すると、山川さんの隣にいた女性が藤沢さんに見惚れながら呟いた。
「し、失礼する!」
「はい、ご連絡お待ちしております」
その女性の言葉に山川さんがきびすを返して懇親会会場を出て行ってしまった。姿が見えなくなったのと確認するとほっと息をはく。安心したのかふっと足の力も抜けそうになり藤沢さんに捕まるようによろけてしまった。
「大丈夫? さっきの人って……」
「ご迷惑おかけしてすみません。山川さんは……前の会社の、社長です」
今はもうそれ以上でもそれ以下でもない。何よりも藤沢さんにはもうこれ以上は迷惑をかけられれない。二宮さんの存在が頭の中にチラチラと浮かんできてしまう。
ちゃんと自分の足で立たなきゃと足に力を入れる。けれど、藤沢さんは腰を抱き寄せたまま離してくれそうにない。
「藤沢さん、もう大丈夫です。ありがとうございます」
「そう……ねぇ、少し話をしようか」
「話、ですか……?」
これ以上に気にかけてくれなくてもいいのに、藤沢さんは優しい。できればこのまま仕事を終えて部屋を出て行って、ただの社長と社員に戻りたい。これ以上話をしたら藤沢さんを知らなかったころには戻れない。一人で歩けなくなってしまう。
「上に控え室があるから、そこで話をしよう」
「藤沢、社長……」
「あぁ、藤沢社長。私、R&Mの代表をしております山川です。御社の製品いいですねぇ。今使用している製品の保証期間がきたら是非乗り換えを検討したいですよ」
藤沢さんが来ると山川さんは手の平を返したように態度を変えた。こうして仕事をしているときはまだ幾分マシな男に見えるだけ質が悪い。煮えくり返るような怒りをどうしたら良いか分からずに、握られた手にぎゅっと力を込めてしまう。
「是非ご検討ください。それと、うちの坂井が何かご迷惑でも?」
まるで大丈夫だとでも言うように藤沢さんも繋いだ手にぎゅっと力を込めてくれた。
「いえね。彼女、前職はうちの会社で秘書をしていたんですが、急に辞めてしまってね。そちらにご迷惑かけていないかと思いまして」
「とんでもない。とても優秀ですよ。それに、今一緒に生活していますが、頑張り屋ですし、何より可愛いところもたくさんありますし」
そう言うと藤沢さんは見せつけるように私の額に軽くキスをした。突然のできごとに驚くも、それは山川さんも同じなようで顔がひくついている。
「ふ、ふん。やっぱりそういう仲なんじゃないか。この女はそうやって取り入るのが上手いんだ。藤沢社長も騙されないように……」
「ご忠告ありがとうございます。でも、私からしてみると、彼女の魅力に気付けない貴方の方が、可哀想な気がしますけどね」
「ふ、藤沢さん……!」
さすがに言い過ぎではないかと顔を見上げると、藤沢さんはとても冷たい視線で山川さんに視線を向けていた。あの鋭い視線は宮川さんと製品の仕様変更をしていた時よりももっと冷酷な視線だ。
「かっこいい……」
すると、山川さんの隣にいた女性が藤沢さんに見惚れながら呟いた。
「し、失礼する!」
「はい、ご連絡お待ちしております」
その女性の言葉に山川さんがきびすを返して懇親会会場を出て行ってしまった。姿が見えなくなったのと確認するとほっと息をはく。安心したのかふっと足の力も抜けそうになり藤沢さんに捕まるようによろけてしまった。
「大丈夫? さっきの人って……」
「ご迷惑おかけしてすみません。山川さんは……前の会社の、社長です」
今はもうそれ以上でもそれ以下でもない。何よりも藤沢さんにはもうこれ以上は迷惑をかけられれない。二宮さんの存在が頭の中にチラチラと浮かんできてしまう。
ちゃんと自分の足で立たなきゃと足に力を入れる。けれど、藤沢さんは腰を抱き寄せたまま離してくれそうにない。
「藤沢さん、もう大丈夫です。ありがとうございます」
「そう……ねぇ、少し話をしようか」
「話、ですか……?」
これ以上に気にかけてくれなくてもいいのに、藤沢さんは優しい。できればこのまま仕事を終えて部屋を出て行って、ただの社長と社員に戻りたい。これ以上話をしたら藤沢さんを知らなかったころには戻れない。一人で歩けなくなってしまう。
「上に控え室があるから、そこで話をしよう」